ダ・ヴィンチ・恐山
―賭場―
ガヤガヤ……
ガヤガヤ……
「さあさあさあ、張った張った！！！」
「張った張った張った張ったァ！！！」
むぅ……「佐藤」！ 佐藤だ！ 佐藤に三百！
初っ端は「高橋」が硬いと見たね！ 高橋に五百！！
「よござんすか？ よござんすね？ そちらは？」
………………。
「平田」に……五百。
「では、御開帳……」
「総取りは平田！」
む、むう……初手から平田とは読めなかった……
フン、あの新入り、中々運がいいじゃないのさ……！
…………
「さあ、次だ！ 張った張った張ったァ！」
ここは外せぬ！ 「福田」！ 福田が来る！ 五百賭けるぞ！
アタイも五百！ 平田の次は必ず「根岸」が来るって相場が決まってるのさ！
「毛受（めんじょう）」に八百。
……なんだ、あの男の賭け方は？
ハハッ。やっぱりさっきのはマグレだよ！ あの男は素人さ！ なんだい、デタラメな賭け方しちゃって……。ねえ？
そ、そうだな……
（しかし、なんだ？ この胸騒ぎは……）
「総取りは毛受（めんじょう）！」
なっ！？
そ、そんなバカな……！ 毛受（めんじょう）はこの五年で一度も出ていないはず……。
…………
マグレさ、マグレに決まってる……！
……疑うか？
アンタみたいな新入りに荒らされるほど、印鑑博打はヤワじゃあないんだよ！
「さあ、次が最後だ！ 張った、張ったァ！」
俺はここで降りる……。今日は風向きがいけねえ
不抜け！ アタシは賭けるよ！「仲本」に二千！！
無理をすることはねえ……
アンタはどうなんだい！ 賭けるか、賭けないのか！
賭けるさ
……「酢谷」に五千
ご……！？
五千！？？
ああ……
じゃ、じゃあアタシは一万だ！ 一万賭ける！
お、おい、その金は……
おだまり！
「さあ……勝負……」
（そんなこと起こるはずない……！）
仲本……！ 仲本が来るんだ……！！
絶対に…………！！
絶対に…………っ！！
（だって……！）
（だってアタシは……！）
（最後の賭けだけはいつも胴元に金を握らせているんだから―――――！！！！！！！！！）
（アタシが絶対に勝つ！！！！勝つ！！！！！勝つ！！！！！！！！！）
（総取りするのは……）
（アタシだよ！！！！！！！！！）
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
【名字】酢谷
【読み】すや,すたに,すだに
【全国順位】 10,077位
【全国人数】 およそ720人
みな間違える……勝てるという確信があるときほど……
みな同じだった……それこそ……
判を押したように……
